東京地方裁判所 昭和25年(ヨ)2826号 決定
申請人 北沢鶴雄 外五名
被申請人 理研発条鋼業株式会社
一、保証 無保証
二、主 文
被申請人が昭和二十五年八月十日附を以て、申請人等に対してなした解雇の意思表示は、その効力を停止する。
三、理 由
当裁判所の判断の要旨はつぎのとおりである。
一、申請人等は、いずれも、被申請人会社の従業員であつたが、被申請人会社は、申請人等に対し、昭和二十五年八月十日附を以て懲戒解雇する旨の意思表示をなした。
二、被申請人会社が昭和二十三年三月一日から実施している就業規則は、現にその効力を有するものと認められるが、(当庁昭和二十五年(ヨ)第二、一七三号決定参照)その就業規則には、
『第七十六条、懲戒は会社組合同数の懲戒委員会の議を経て組合の同意を得て之を行う。従業員には懲戒委員会において辯明の機会が与えられる。』
との規定がある。
三、しかるに、本件解雇については、懲戒委員会が開かれていないから本件の解雇は、この点において、すでに、右第七十六条に違反している。
四、この点に関し、被申請人会社は、本件解雇につき、会社は申請人等の所属する理研発条鋼業株式会社従業員組合の同意を求めたところ、右組合は組合大会を開いた結果、(この大会において、申請人等は解雇理由を告げられ、弁明の機会を与えられた。)右解雇を承認し、且つ懲戒委員会を省略する旨の囘答があつたので八月十日附を以て、本件解雇を行つものであると主張する。
しかしながら、右組合大会において申請人等が解雇理由を告げられ、辯明の機会を与えられたということも明確ではないし、又右組合大会が、その解雇理由について十分な検討を加えたこともはつきりしていない。
そもそも、懲戒解雇は、経営秩序維持のため経営者のもつ経営指揮権の発動としてなされるものであるから、そのイニシアテイヴをとる会社側のいないところで解雇理由を聞かされ、辯明の機会を与えられたとしても、それは全く無意味なことであるといわなければならない。而して懲戒委員会は、労使双方の委員を以て構成せられ、その面前で辯明したところを労使の異る角度から検討協議して解雇の適正を図らうとするものであるから、それは、申請人等にとつて重大な利害をもつ制度であり、従つて、申請人等の意に反して、これを省略することはできない、といわなければならない。すなわち、本件解雇は、前記組合の承認があつたからといつて適法となるものではない。
五、而して、右第七十六条のように解雇に関する事項を定めた条項に違反した解雇は無効であると解すべきであるから、被解雇者として取扱われることによつて申請人等のこうむるいちじるしい損害をさけるため、主文のとおり決定したしだいである。
(裁判官 柳川真佐夫 中島一郎 高島良一)